新しくなりつづけるワヤンなるもの        

松本和枝

 ソロのタマン・ブダヤ(文化公園)で9月5日から9日までパングン・スニ・ジャワ・トゥンガ(中部ジャワ芸術舞台)が開かれ、音楽、踊り、劇十一団体、ワヤン人形などの展示が行われた。中でも新鮮で面白かったワヤン3公演について紹介したい。一つはワヤン・プリン。プリンとはジャワ語の竹で、竹筒の人形に椰子の繊維の髪が付いていて、動くとなおユニーク。バナナの葉のグヌンガンの緑が美しい。伴奏はドレミ音階にしたガムラン楽器と女声ボーカルで、何とも不思議な音が印象に残る。マハーバーラタの中心人物ビモが、突然超能力を秘めた爪を失い、これからどうすればいいのかという物語を、踊り、寸劇をまじえて。ダランはキ・スリ・ウィドド。幼い頃ゴレ人形で遊びたがったのを高価なので壊れるのを恐れてもたされたのがこの竹人形。アチェの津波後、この上演でソロ周辺の村を回り6ヶ所で募金を集め寄付をしたという。
 二つ目は、ワヤン・チャルン。チャルンとは、バニュマス地方の竹の楽器で、高速で弾く高音2台と、低音2台のかけあいは軽快で明るく、威勢のよい囃し声、のびやかな女性ボーカルとバイオリンで魅力ある伴奏だ。途中で現れた女装のおどけた舞姫に子供たちも大喜びする。物語はマハーバーラタの運の悪い役のブリスロウォがアルジュノの婚約者ロロイルンに思いを寄せ翻弄されるが、あまりな彼女の態度にアルジュノもあきれて置き去りにする。ダランはキ・ジュマリ。人形はいずれワヤン・クリにしたいそうだ。このような自由に発想したワヤンの試みとその競技会や上演会がいろいろあり、すでに活躍しているキ・スラムット・グンドノのワヤン・スクッ(草人形)の影響もあるという。
三つ目は、ワヤン・カンプン・スブラッ。伴奏はダンドゥットのバンドで楽器はクンダン、ドラム、ギター、サックス、フルート、マラカス、とボーカル。リアルな人間を模した人形、物語も村の日常、まさに今日そのものの姿が笑いを誘う。ジャワの正装の長老、石槌を手にしたおかみさん、ビンを片手の飲み助、裾を短くした制服の女学生、インドネシア語できどって話すお役人、エレキを唸らせるギタリスト、腰をくねらせ色っぽいダンドゥット歌手、プラカードを手に押しよせる民衆のデモ隊。笑わせながらまじめで賢いのだ。ダランはキ・ジリトゥン・スパルマン。この3つのワヤンは、みな2時間以内で小編成。一晩のワヤン・クリも上演するダランの創作である。この後マンクヌガラン王宮を中心に、ワヤン・フェスティバルが、9月23日から10月1日まで開かれ、海外からはドイツの創作影絵が参加。人気ダランの息子たちもエントリーした子供のワヤン競技会もあり、ますます盛んなようすのワヤンだが、どこまでをワヤンと呼んでいるのか謎なほど変化に富んでいる。

ワヤン大会の第二報、ジョクジャからです。
ワヤン大会の第三報、ジョクジャからです。
ワヤン大会2005ジョクジャ報告
「まぼろしの城をめざす」を見て(チュ・S)
 見事にダランを演じた
 マツモト、40年間ワヤンを学ぶ
ワヤンは日本人に興味を持たれている
一度口から出たことばは…(大和田尚)
ワヤン大会奮見記(熊谷 正)
ワヤン・チャンクマン(中辻 正)
ワヤン大会へ向けて(松本亮)






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