ワヤン大会奮見記

熊谷 正

夕闇迫るジョクジャのマリオボロ通りを、真っ赤なTシャツを着たお兄ちゃん達が操る百余のベチャの隊列が王宮に向かって疾走した。ワヤン大会の開会式に出席する関係者数百人を乗せて。ジョクジャの知事でもあるハマンク・ブウォノ十世の開会宣言とキ・スカスマンのワヤン・ウクル「アルジュノの生涯」で始まった四日間。連日五カ所の会場で徹夜のワヤンが開催され、昼間は各地から集まってきたダランや関係者の会議とガルーダホテルの周りは賑やかだった。ホテルのロビーに展示した有名なダラン達の写真を、大勢の人に観て頂くこともできた。そして最終日撤収の時に「是非この写真が欲しい」と声をかけてきた若者がいた。聞くとソロ芸術大学の学生とのこと。十年来撮り続けてきたワヤンの世界、外国人の目線で捉えた写真を現地のワヤンを観る機会の多い彼らに観てもらえたら、こんなにうれしいことはない。特別の計らいでダランの目前に陣取り撮影させて頂いたことへの感謝と畏敬を想い、快く贈呈した。
「まぼろしの城をめざす」の照明のお手伝いを不束ながらやらせて頂き、ダランのオーラというのか松本先生の人形遣いの気迫を身近に見届けることができた。そして終演を迎えた時の憔悴しきった姿に、ワヤンと出くわすきっかけを下さった人形遣いの故・水田外史の姿とダブり感極まった。
最後の夜、伝統芸能が進化していく中で、人形芝居の原点ともいえるような一座とも出会えた。たった五人で演ずるワヤン・チャンクマン。ガムラン演奏ではなく、口でガムランのように歌い、しかも革の人形が高価で買えないからと、紙で作った人形を駆使し、実に見事にワヤンを演じているのである。連日ワヤン三昧の撮影行。しばらく遠ざかっていたが、「人形劇と大衆」に興味を抱いて撮影をし始めた自分のテーマの再確認の機会になった。

ワヤン大会の第二報、ジョクジャからです。
ワヤン大会の第三報、ジョクジャからです。
ワヤン大会2005ジョクジャ報告
「まぼろしの城をめざす」を見て(チュ・S)
 見事にダランを演じた
 マツモト、40年間ワヤンを学ぶ
ワヤンは日本人に興味を持たれている
一度口から出たことばは…(大和田尚)
ワヤン・チャンクマン(中辻 正)
新しくなりつづけるワヤンなるもの(松本和枝)
ワヤン大会へ向けて(松本亮)






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