初ジャワ旅行

                                    吉上智子



 初めてのジャワの旅を終えてから、もうすぐ1ヶ月が経とうとしていますが、このワヤンの旅がつい昨日のような、でもずっと前のような不思議な感覚が訪れます。時々、ジャワの風が吹き抜け、心がキュンとします。
「ジャワにご一緒しませんか」と誘っていただき、夫婦で参加させていただきました。ジャワ初体験&ワヤン不勉強の私たちを松本亮・信子夫妻をはじめ、ジャワに行くと生き返る(!?)みなさんが優しくさり気なくサポートしてくださり、ジャワの空気に触れることができました。
 今回の旅行の目的である「まぼろしの城をめざす」の公演の日、午前中、マンクヌガラン王宮のプンドポで、吹き抜ける風の中、ひんやりとした大理石の床に座り聴いたガムランの心地よかったこと。たおやかな宮廷舞踊に心が緩み、ふわ〜と柔らかな気持になりました。そして、夕方からはいよいよ公演本番。
 「まぼろしの城をめざす」上演中、演じている亮さんの背中からは、ワヤンに魅入られ、引き寄せられた亮さんが、これまで感じてこられたいろいろなこと、出会ってきたたくさんの方達のこと、そしてなにより亮さんが重ねてきた時間、亮さんの生き方そのものが伝わってくるようでした。この日の公演にマンタプさん、バンバン・スワルノさん、ウントス・ススモノさんなど、錚々たるダランが駆けつけてきてくれたことが、亮さんが誠実に重ねてきた時間の証だと思いました。
 ところで、たしか、亮さんが誘ってくださった時は「まっ、のんびりと過ごしましょう」って、あの無敵な笑顔でおしゃっていたはずだったのに…。マンクヌガラン王宮での「まぼろしの城をめざす」の公演をはじめ、スリウェダリ公園内にある劇場でのワヤン・オラン観劇、中部・東部ジャワへのドライブ&ワヤン遺跡群巡り、マンタプさんのお宅訪問、バンバン・スワルノさんのワヤン上演観劇、ワヤン博物館見学等々となかなかハードなスケジュール。いつの間にか、エネルギッシュさをゆったりした笑顔に包みこんだ亮さんペースにひっぱられ、もりだくさんのジャワ旅行は続きました。
 特に今回のもうひとつの目玉である、中部・東部のワヤン遺跡巡り。いくつもの町を通り抜けたドライブも印象深いものでした。
 ジャワの道は、どの道もまるで首都高速、はたまた、カーレース参戦中かと思わせるような高速感、斜線無視の追い越し合戦。ジェットコースターのような坂道を下ったり、でこぼこ道もスピード落とさず、時には夕日と追いかけっこしながらの遺跡巡り。ほんとうにハード&スリリングなこの長時間ドライブが、みんなの一体感をより強くしてくれました。
 ワヤン遺跡巡りでは、その昔レリーフに刻まれた物語が、いくつもの時代も経て、現在も生きたワヤンとして上演し続けられていることの深さも感じました。ソロの街角のはんこ屋さんのワヤンはんこ、マリオボロ通りでみかけたTシャツ、ミロタ・バティックで見つけたクッションカバー、トランプ、ハンカチのなかに描かれていたアルジュノやクレスノ、カルノ、クンティ、そしてスマル達にも、人々に愛され受け継がれてきた生き生きとしたワヤンが息づいているんだな。
 今、この原稿もジャワティーを飲みながら書いているのですが、いや〜、ほんとうに甘かったな、本場のジャワティーは。インドネシアで買ってきた砂糖をいつもより多めに入れたジャワティーを飲みながら、強い陽射し、吹き抜けていく風や空気を思いだし、ジャワの「いい加減がいい加減」な、なんともいえない鷹揚な感じが蘇ってきて、またまた胸がキュンとしてきました。今回のこの良き旅に、terima kasih!


マンクヌゴロ王宮プランウダナンの間での影絵詩劇上演
「まぼろしの城をめざす」=7月25日(水)
そしてソロ、ジョクジャ周辺の風情について……
 小報告(松本亮)
「まぼろしの城をめざす」見物の実況報告(チュ・ストヨ)
ダラン・ジュパンが魅惑を撒布するとき……
(ルトフィヤ/ソロポス紙、2007/07/27)
ソロ・プランウダナンの一夜           (宮代厚子)
シンデン・ジュパンと日本ワヤン協会のソロ、マンクヌガラン公演(狩野裕美)
ラ・ママ初出演と、マンクヌゴロ王宮公演(中村深樹)






日本ワヤン協会


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