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キ・スティノ・ハルドコ・チャリト(1939~)

 キ・スティノはソロ南方の山地ウォノギリのエロモコ村に居を構える。キ・ナルトサブドとともに、私のワヤン追究にもっとも手をかして下すったダランだ。1970年代、キ・スティノのガムラン楽器群は町のダランの青銅製のものと違って鉄製だった。何ともなつかしいひなびた音がして、えもいわれぬ音のアレンジとともに、私はその嫋々たる調べに酔いしれた。
 キ・スティノは多くのダランの中でもとくにジャワ神秘主義の精神性に深みをみせ、その語りの内容は私を魅了した。録音させてもらい、訳文は拙著『マハーバーラタの蔭に』『ラーマーヤナの夕映え』ほかに収載させていただいたのである。
 ワヤンは美しく、そのさばきも見事だった。多くのワヤンをゆずっていただき、それらは私の手元にある。体調をくずされたあとのこの十年ほど、私は失礼を重ねているのだが。(松本 亮)


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