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キ・ナルトサブド(1924~85)

 その人の死が一つの時代を劃するということがある。ワヤン千年のうちにも何十回何百回となくその節目があったはずだがキ・ナルトサブドの死もまたその節目の一つだったろう。
 私がはじめて同氏のワヤン上演に接したのは1970年で、以来十五年の間私のジャワ訪問はそのワヤンへの期待にいつも心踊っていたのである。彼はマハーバーラタの諸演目の魅力のありったけを魔性の語りと心に沁みるガムランで表現した。
 私は彼の語りの一語一語を学ぶことでワヤンまたジャワの精神文化の奥底を探ろうとした。所蔵する多くの文献のコピーやワヤンの数体をゆずっていただいたりした。その工房のワヤンは現代のインドネシアでつくられる最高最美のワヤンだった。いまや、その最高のガムラン・メンバー゛チョンドン・ラオス゛無く、そのワヤンもまたすでに夫人の手元に無い。(松本 亮)

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