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キ・ティンブル・ハディプライトノ(1934~)
キ・ティンブルはジョクジャでもっとも著名なダランだ。ソロ・スタイルとジョクジャ・スタイルはワヤンの姿、ガムランや物語の展開など、細部にわたって異なる。キ・ティンブルはジョクジャの伝統を守り、1970年代以降、ソロ・スタイルのキ・ナルトサブドと双璧をなして、彼はなお第一線にある。 　キ・ティンブルには依頼して《アノマン使者に立つ》《カルノの一騎討ち》などを見せていただいたが、ことに後者の中のドゥルソソノの戦死の場面は凄かった。凄かったというのはワヤンのさばきではない。粗暴なコラワ百王子の次男ドゥルソソノの死を悼み、その魔を退散させるための儀礼をとり行う真摯な祈りのはげしさだった。香煙がクリルいっぱいに焚かれ、バラとジャスミンを浮かべた聖水（クンバン・スタマン）が散布されて、経を唱えるかとみえるダランの語りがえんえんとあたりを圧したのである。（松本　亮）

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