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以前私は“近頃のワヤン”と題して稚拙ではあったのですが、文を載せていただきました。その続きみたいな感じで今回、またちょっと書かせていただくことになりました。
先日、3月９日、ジョクジャカルタでダランはサヨコ氏のワヤンに誘われ、唄をうたいにいきました。そのワヤンはいわゆる政治のキャンペーン、ジョクジャカルタの知事選のため、PAN,国民信託党の党首アミン・ライスのご子息、ハナフィ・ライスが立候補し、その一環で行われました。
当日は地方テレビのジョクジャテレビも生中継での放映に来ていました。
現地に到着した私たちは、いつものようにジャワ正装し、会場へ向かいました。と、ずいぶん沢山のチャンプルサリの方々がいらっしゃるではありませんか…。はぁ…、ワヤンの前のガムラン演奏、クルネガンの代わりにチャンプルサリなんだわ、という予想、当り。
しかも、MC付き。この場合のMCというのは、単なる司会、つまり進行役だけを仰せつかっているわけではなく、漫才みたいなこともやるのがこちらの通常で、そのようにMCが男女ひとりづついて、やっていましたが、そのうち男性が一人増え、また、とても小さい（１ｍ足らない位の）男性が一人増え、計4人で賑やかにやってました。と、見ていましたら、そのMCの女性は実はジャカルタから呼ばれたダンドゥットの歌手だったのです。
歌い始めたら、そのダンドゥットのかっこいいこと！なるほど、わざわざジャカルタから呼ばれたわけです。
チャンプルサリの歌手は女性2名ほど。デュエットになると、そのMCの男性の方が歌うわけです。
それにしても、長い。一体いつ終わるんだろう？ いや、私たちのワヤン、いつ始まるんだろう？ 20時前には会場入りしていて、既に21時半。
主賓のハナフィ・ライスが、ようやく来場されました。それでも、私たち、ワヤン組はまだ舞台へあがらず、チャンプルサリをながめている…。
22時、ようやく舞台へ。すぐの30分後にリンブッアンが始まりました。普通、このようにチャンプルサリも待機している場合は、ダランがまず、ワヤン隊になにか遊び唄をやらせてから、チャンプルサリの世界になるのがだいたいなのですが、なんと、ダランのプレゼンテーションもなしに（いわば勝手に）始まったのです。これは、ちょっと、かなりびっくりしましたが。だって、ワヤンなのに…？（ダラン、無視されてる？）（でも、実はその辺も、ダランの器量でもありますね…はは、手厳しい？でも、ホント）
もし、そのままチャンプルサリが始まったとして、例えば私がよく参加しているタントゥット氏とか、マンタッブ・スダルソノ氏であれば、かならずチャンスを伺ってガムランの方へ話を持っていき、なにかしらガムランの遊び歌をきかせるのですが、なんと、この日は、それが全くなかったのです。ダランはチャンプルサリの間、だま—ったまま、一声も聞こえませんでした。そして、そのチャンプルサリは1時45分まで。次のゴロゴロも2時半に同様に始まり、3時過ぎまでやっていました。
主宰側依頼としてはワヤンを3時半に終了してほしかったのですが、演目もデウォ・ルチで、そうはいかず、（どんな演目でもこれだけ短縮するのは大変ですが）ワヤンは4時終了となりました。
主賓のハナフィ・ライスは“ワヤンは最後までみるものだ”と最初にお話されてた
通り、終演まで見てられました。
確かにジョクジャカルタは今、とてもチャンプルサリが盛んです。
ジョクジャテレビは割合いろんな音楽を平均的にプログラム、放映していますが、チャンプルサリへの力の入れ方は別段だと思います。また、だいたいはライブで放映していますが、そこへ集まる人の数も大変なもので、ジョクジャのチャンプルサリへ
の関心の高さが伺えます。
しかし、この場合、どうしてワヤンがなくてはならないんでしょうか、というような気持になってしまいました。
ワヤンという文化の持つ意味が、そこにあるのかどうか、私はとても疑問です。
ただ、なんとなく飾り的に、視覚的にワヤンがあると豪華に見えるから、置いているだけなのかしら、と思います。最も、今まで政治のキャンペーンにワヤンを催すのは普通にされていただけに、その名残で、やっぱり、“なんとなく”ワヤンがないと…という気分的なものなのでしょうか。
ワヤンを終えたあの朝、私の胸に残ったものは、ワヤンを一晩やった、という充実感とはほど遠い、チャンプルサリのお手伝いをしにいったような、なんだか、自分たちが小さくなっちゃった、そんな気持だけでした。
時代は誰がつくるものなのでしょうか。
メディアの影響の大きさを感じずにはいられません。
経済成長が著しいインドネシアは、今、文化が激しい勢いで落ち込んできています。
こうなると、ジャワのワヤンがどうのこうの、とやっている私達日本人の存在は、インドネシア人にとって、割合、素晴らしい存在かもしれないです…ね？
いや、ほんとに。 |
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