ヌサンタラ・ワヤン週間2008

日本ワヤン協会「ジョコ・タルブ」を上演する(コンパス紙=インドネシア最大の日刊紙 2008/8/11)



 

 日本のワヤン芸術集団である日本ワヤン協会は、ヌサンタラ・ワヤン週間の公演第2日、八月九日(土)夜のパクアラマン王宮で、演目「ジョコ・タルブ」(=「天人の羽衣」)を上演した。
 物語り、音楽、ワヤン・クリのかたちなどへのさまざまな変革、修飾でもって、ダラン、マツモト・リョウ主宰の集団は、一時間の上演の間に、多くの観衆の魂をうばうことに成功した。
 ふつうワヤン・クリの世界には登場しない演目「ジョコ・タルブ」の選択は、やはりこの夜の上演の特殊な吸引力となったようだ。一般のワヤン・クリの上演はラーマーヤナもしくはマハーバーラタである。日本ワヤン協会はまた場面の一部に踊りも挿入する。
 また別なユニークさは、この夜の上演が、琴、笛、琵琶そしてガムラン楽器の合体におけるジャワ、スンダ、日本音楽の合体である。通常のワヤンとは異なる運びをみせたこのワヤン・クリは、日本のコミック様式に似た性格をしめしていた。
 またこの上演は、二カ国語のナレーションを使っている。日本語のナレーターは、相良侑美、インドネシア語はエレンである。
 「ジョコ・タルブ」は、地上の湖水で水浴びするため天界から降りてくる七人のビダダリ(天女)の物語である。しかもビダダリの一人ナワンウランは、その衣裳が村の青年のジョコ・タルブによって盗まれたゆえ、天界へ舞い上がることができない。
 ついにジョコ・タルブはナワンウランと結婚し、ひとりの女児を授かる。二人は、やがてジョコ・タルブがナワンウランの警告を破ることで、別れ、彼女は天界へ帰らねばならなくなる。
 上演後、マツモトは語った。「創作としてこの物語を選んだ理由の一つは、これがこの国の絵画や踊り、またクトプラ(新派風芝居)の題材としてよく採り上げられているのに、ワヤンでは採り上げられていない、ということです。ワヤン・クリの素材として二大叙事詩がここ数百年ほぼ固定化しているのは、わたしにとって、納得行くような、不思議でもあるようなことなのです。ジョコ・タルブは日本ではもう四、五回も上演しています」と。
 「ジョコ・タルブ」は世界的な広がりをもつ物語のひとつで、インドや中国、朝鮮、中近東またヨーロッパにまで多く見出され、人生の貴重な価値観をはらんでる。「日本ではこの物語はハゴロモと呼ばれています」と、かれは言った。(注=羽衣伝説は、古く白鳥伝説と結びついて多く北半球の北部に流布している。従って白鳥のいない南半球のジャワやバリでは、白鳥はガチョウと混同されていることが多い。少年少女さらに大人でも、この地のほとんどの人は白鳥の図像を見て、アンサ=ガチョウという。=松本)
 ヌサンタラ・ワヤン週間2008の実行委員長ヌルサットウィカは、今年の実施は第二回目で、2006年以来の開催です、と語った。「2007年には、なお震災後の諸情況の影響のため、開催できなかったのです」と。
 ヌルサットウィカは付けくわえ、こう話した。このプログラム実施の背景には、しだいに下降している若い世代のワヤン・クリ芸術への関心に不安を感じているということがあるのです。とはいえ私はこのプログラムを、若者層の関心を惹くことのできる創作を発見するための、ワヤン芸術熱愛者たちによる挑戦とみているのです、と。
 ヌサンタラ・ワヤン週間2008は、八月十四日までつづけられ、以降毎夜「ワヤン・グテク」、「ワヤン・ベベル」「ワヤン・ファブル」「ワヤン・ササク(ロンボク島)」が上演される。(ENG)    (R)
   


小報告=松本亮
ヌサンタラ・ワヤン週間2008
日本ワヤン協会「ジョコ・タルブ」を上演する

(コンパス紙=インドネシア最大の日刊紙 2008/8/11)






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