225.Banjaran Kumbakarna
クムボカルノの生涯

 このラコン・バンジャランはブガワン・ウィスロウォと妻デウィ・スケシの悲しみから始まる。彼らの二人の子がラクササ姿であったからである。この子供はクムボカルノと名付けられた。一方、これもラクササ姿の長男は、ドソムコの名が与えられた。
 さらに三人目の女の子も、その姿はラスクシ(女ラクササ)であった。この子はサルポクノコの名が与えられた。四人目にやっと立派な武将が産まれ、グナワン・ウィビソノと名付けられた。
 成長を待って、四人の兄弟たちは各々の目的で森での苦行に入った。他の兄弟と同様にクムボカルノは何年にも渡って苦行した。ついにバトロ・ナロドが降下した。その神に、クムボカルノは最初、千年生きて、地上の食べ物の滋味を味わいたいと願った。ナロドはその望みを満たすことを認めた。しかし、人が長く生きれば、それだけ罪を犯す機会も増えるということを想起させた。また長く生きる事は歳をとらないという事を意味しない。だんだんと歳を取り、身体もだんだん弱くなり、食べ物を味わう味覚も損なわれるのだ、と。
 これを聞いて、クムボカルノは気が付いた。かくて彼はその願いを変更した。彼は誰にも邪魔されずに長く眠れますように、と願った。バトロ・ナロドはその願いに同意した。
 プラブ・ドソムコがデウィ・シントを誘拐した時、クムボカルノとグナワン・ウィビソノは兄に過ちを気付かせようと努めた。彼らはドソムコに、すぐにデウィ・シントを解放し、その夫、ロモウィジョヨに返すようにと意見した。この意見を聞いてドソムコは怒った。
 クムボカルノとグナワン・ウィビソノは罵られ、長兄の誹りに耐えかねてクムボカルノはパングルブルゴンソの屋敷に帰り、眠ってしまった。彼はロモウィジョヨを手助けする猿の軍団とアルンコ軍との戦いが勃発しても起きようとしなかった。
 アルンコの多くの兵や司令官が戦死し、プラブ・ドソムコは息子インドラジトに、クムボカルノを起こすよう命じた。クムボカルノはここに至ってもまだ目覚めていなかった。インドラジトは足の親指の毛(ウルチュムブ)を引き抜くことで、クムボカルノを目覚めさせた。インドラジトはプラブドソムコがクムボカルノの伺候を求めていると語った。
 王宮に着き、クムボカルノはまず、千のトゥムペン(ご飯を円錐状に盛ったもの)と九頭の象の肉を用いたインクン(通常は鶏肉などを用いた料理の一種)を所望した。
 王宮に着くと、ドソムコは、クムボカルノに猿の軍団との戦場へ赴く事を求めた。クムボカルノは拒否した。この戦争はドソムコの強欲が引き起こしたものだから、と。
 激怒したドソムコは、弟を食うだけの役立たずで、国の運命を心に懸けぬ者だと罵った。
 これを聞き、クムボカルノはその超能力で今まで食べたもの全てを、完全に新鮮なまま吐き出した。そして言った。戦場へ行こう、しかし強欲にまみれたドソムコの行為を擁護するためではない、と。「私は祖国、アルンコのために戦場に行き、敵と対峙し闘う。」と彼は言った。
 純白の衣服で決意を固めてクムボカルノは戦場に立った。クムボカルノが暴れ回り、猿軍には多大な犠牲が出た。クムボカルノとの一騎打ちは困難で、やむを得ずロモウィジョヨとラクスマナが戦場に立った。二人はそのラクササに雨のごとく矢を降らせた。ロモとラクスマナの矢に当たり、まずクムボカルノの両腕が射切られた。しかし痛みを気に掛けず、堪えて、クムボカルノは未だ生贄を求めた。両の脚が蹴り上げられ、猿兵の多くが踏みつけられた。ロモとラクスマナは矢の攻撃を続けた。かくてクムボカルノの両足が射切られた。しかしこのラクササは未だ降伏しなかった。脚も手も無く、身体を転がしながら、彼はまた多くの猿兵を殺した。ロモとラクスマナはやむなく矢の狙いをクムボカルノの首に定めた。後に、戦死したクムボカルノは祖国の英雄と讃えられた。
 クムボカルノの妻は天界のビダダリで、デウィ・アスワニといった。ドソムコがそのビダダリを妻としてクムボカルノに与えたのである。この結婚でクムボカルノは二人の息子、アスワニ・クムボとクムボクムボを得た。彼らも父と同じくロモウシジョヨ率いる猿軍との戦いで戦死した。
 クムンボカルノの惨い死に様は父、ブガワン・ウィスロウォに対するジャムブマンリの呪いに由来する。四十年前、ブガワン・ウィスロウォはジャムブマンリを惨く殺した。両の手脚を切り落としたのである。その時、ジャムブマンリは呪った。いつの日かウィスロウォの息子もまた自分のように死ぬのだ、と。
 死後、クムボカルノの魂は天界の扉を見出せなかった。何年もの後、ついに苦行者になった弟と出会った。
 グナワン・ウィビソノに、クムボカルノは生の完全性への道を示してくれるよう求めた。ウィビソノはクムボカルノの魂に、ビモの左腿に入るよう、教えた。
 バラタユダ最後の日、ビモはドゥルユドノと一騎打ちに及んだ。ビモはスユドノのゴド(棍棒)に打たれた。その時、クムボカルノの魂は完全なる世界へと飛び去った。
 このラコンはポピュラーなものに属する。

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