146.補遺:バムバン・イラワン

 バムバン・イラワン、アルジュノの息子のひとり。母の名はデウィ・パルピ(Palupi)あるいはデウィ・ウルピ(Ulupi)、ヨソロト(Yasarata)の苦行所の人である。他のアルジュノの多くの子供たちと同様に、バムバン・イラワンはその父の立ち会いなく産まれた。アルジュノは結婚後しばらくして去って行ったからである。彼は祖父と共に住み、その手元で育てられた。
 バムバン・イラワンは父にそっくりで、容姿端麗、超能力に溢れていた。父親とは異なり、バムバン・イラワンは妻を一人しか持たなかった。ドロワティ国王プラブ・クレスノの娘のひとり、デウィ・ティティサリである。
 バムバン・イラワンは若くして死んだ。
 バラタユダ(パンダワとコラワの大戦争)勃発の知らせを耳にして、彼は母と祖父のもとから、父の前に馳せ参じようとした。彼は他の兄弟たちと同じく、パンダワ側に合流しようとした。
 この若き善なる武将の願いは、祖父に承認された。しかし、バムバン・イラワンは目的地にたどり着く事はできなかったのである。途中でコロスレン(Kalasrenggi)という名の超能力のラクササに阻まれたのだ。バムバン・イラワンは殺されてしまった。これはバラタユダ七日目の出来事であった。
 知らせを聞いた父、アルジュノはコロスレンギに挑んだ。ラクササはついにアルジュノの持つ宝弓アルド・デダリ(Harda Dadari)に射られて死んだ。
 バムバン・イラワンの死の物語に、一般的にはダランたちは、このアルジュノの息子は真実、バラタユダの勝利祈願の魔除け(生贄)の象徴なのだ、との解釈をあたえる。
 (実際の)ワヤンで上演されるバムバン・イラワンの死は、(原典)マハバラタとは異なっている。マハバラタの書においては、バムバン・イラワンはイラワット(Iravat)と呼ばれる。母はノゴ・コロウヤ(Naga Korawya)の娘デウィ・ウルピである。彼はバラタユダ九日目にクルカセトロ(Kurusetra)の戦場で戦死した。戦場の西方でイラワンはコラワ側のプラブ・アラムブソ(Alambsa)と烈しい戦いを繰り広げ、戦死した。
 ワヤンの世界において、バムバン・イラワンは他の名でも著名である。それはガムビル・アノム(Gambir Anom)とバムバン・ジョゴノロ(Jaganala)である。ガムビル・アノムとは、イラワンがあるラコン・チャランガンで、パラングピ(Paranggupita)の王となった時の名である。このラコンにおいて、プラブ・ガムビル・アノムは、超能力に優れた女性指揮官(セノパティ)、デウィ・ラドランムンクン(Ladrangmungkung)を部下に持つ。ラドランムンクンはアルジュノを殺し、その遺体をガムビル・アノムの面前に運んだ。アルジュノはデウィ・ウルピに触れられることで、蘇生した。
 スラカルタ・スタイルのワヤン人形制作(seni kriya Wayang Kulit Puruwa)では、イラワンの姿はバムバンガン(Bamnangan=主にアルジュノの息子たちのような若い武将)である。スムピン・クムバン・クルウィ(Sumping Kembang Kluwih)を付け、チンデ(cinde)のズボン、カントンガン(kantongan)を着用している。また、プラブ・ガムビル・アノムにはラジャ・サブランガン・バグス(raja sabrangan bagus)を用いる。

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