WANDA
ウォンド

 ウォンド (wanda)とは、ワヤン人形制作において、特定の登場人物を、一定の雰囲気に合致させて表現する型のことである。(訳注:特定の場面に対応する、キャラクターのモデルのこと)。一揃いのワヤン・クリ・プルウォで幾つかの型を持つのは、アルジュノ、ビモ、クレスノ、ガトゥコチョ、ドソムコ、ボロデウォその他である。
 アルジュノには女性と愛の営みを為す際の型が在り、またアルジュノには、敵と一騎打ちする際の型もある。異なる型を用いることで、ダランが、物語の雰囲気を出したり、キャラクターを演じる事を、よりやり易くするのである。各々のキャラクターにおけるウオンドの違いは、彫り方、形状、彩色などによって区別される。
 アルジュノについて言えば、彼は若い時には通常プルマディ、あるいはパマディと呼ばれるが、五つのウォンドを持っている。それは、キナンティ、ジャングレン、マング、ルントゥン、ムラティ (KInanti, Janggleng, Mangu, Renteng, Melati ) である。また、成人して後のアルジュノまたの名ジャノコも五つのウォンドを持つ。即ち、ウォンド・プガシ、プガウェ、パチェル、キナンティ、プガンテン (Pengasih, Pengawe, Pacel, Kinanti, Penganten )である。アルジュノの兄ビモは五つのウォンドを持つ。ウォンド・ミミス、リンタン、グルナット、リンドゥ・パノン、そしてリンドゥ・バンバン (Mimis, Lintang, Gurnat, Lindu Panon, Lindu Bambang) である。ウォンド・リンドゥ・パノンはダランによって、ビモが戦いで暴れ回るときに使用される。
 以下にワヤンの登場人物の一部のウォンドを示す。
 
ガトゥコチョ:Guntur, Guntur Prahara, Guntur Geni, Guntur Samdra, Kilat, Tatit, Tatit Sepuh, Mendung, Mega
デウィ・スバドゥラ(スムボドロ):Lentreng, Parem, Rangkung
デウィ・スリカンディ:Patrem, Goleng
アビマニュ: Rangkung, Bonitit
バムバンガン(bambangan=アルジュノの息子たち): Miling, Padasih
ナクロ、サデウォ: Bonitit, Banjet
コクロソノ(青年時のボロデウォ): Kilat, Sembada, Bangbang wetan
ボロデウォ: Geger, Kaget, Sembada, Paripeksa, Rayung
ノロヨノ(青年期のクレスノ): Sembada, Geblag
ウドウォ: Jaran, Tandang
ソムボ: Bontit,Sembada, Banjet
プラゴト: Bundel, Pacel
プラボウォ: Bundel, Pacel
プントデウォ: Malatsih, Penganten
ユディスティロ: Lare, Jimat, Deres, Putut, Manuksma
スティアキ: Mimis, Wisnu, Kakek
クレスノ: Gendreh, Mawur, Rondon
ノロヨノ: Geblag, Sembada, Jangkahan
スマル: Mega, Watu, Ginuk, Brebes, Miling, Dunuk, Dukun, Gilut
ガレン: Kancil, Wregul, Bajang, Janggleng
ペトル: Jamblang, Jengglong, Mesem, Dlongop, Moblong
バゴン: Gembor, Gilut, Roti, Ngengkel
ドゥルユドノ: Jangkung, Punggung, Jaka
バヌワティ:Golek, Berok
バスカルノ: Bledru, Lontang
ドゥルソソノ: Belis, Dlomek, Bujang
ブリスロウォ: Cawet, Bokong
ドソムコ: Gonteng, Pamuk, Sambada
スンクニ: Borek, Tanggap, Mlenyok, Climut
トゴク:Manuk, Goprak
ドゥルゴ:Gedrung, Surak, Belis, Karna
バトロ・グル: Arca (Reca), Rama, Karna
ウルクドロまたはビモ: Bambang, Jagur, Gurnat, Lintang, Kedu, Tatit, Mimis, Bedil, Ketung, Jagong, Bugis, Gandu
ブロトセノ: Mimis, Gurnat
アルジュノあるいはジャノコ: Jimat, Malatsih, Kanyut, Renteng, Brongsong, Lintang, Gendreh, Mangu, Muntap, Kedu, Kinanti
プルマディ: Pengawe, Pengasih, Kinanti, Kadung
ドソムコ: Belis, Bugis
クムボカルノ: Macan, Barong
コクロソノ: KIlat, Sembada
ノロヨノ: Geblag, Bontit, Sembada
ドゥルノ: Keton, Enem
スンクニ: Keton, Ketu Tali
ドゥルマガティ: Pocol, Cawet
インドラジト: Bokong, Cawet

 ウォンドの形状はワヤン芸術家たちによって創出され、決定されるが、ジャワ文化においては、その時々の統治者たる王の名において創出され、いくつかの本にも編纂された。先のワヤンのウォンドも王のそれである。
例えば、ワヤンに関する諸本において述べられるのは、スルタン・アグン・アニャクロクスモはアルジュノのウォンド・マングを創った。スナン・セダ・クラプヤクはアルジュノのウォンド・ジマットを、スナン・セダ・トゥガラルンはアルジュノのウォンド・カニュットを創った。
 ワヤン人形創作における新しいウォンドの創出は、実際はその時代時代のワヤン製作者たちの手になるものとはいえ、創出されたウォンドは民衆の支持を得てポピュラーになっていく。
 ワヤン・クリ・プルウォの新しいウォンドとしては、インドネシア共和国初代大統領スカルノが、ノロヨノのウォンド・ジャンカ(Jangkah)、またガトゥコチョの三種の新ウォンド、ウォンド・グントゥル・グニ (Guntur Geni)、グントゥル・プラホロ(Prahara)、グントゥル・サモドロ(Samodra)を創出した。他にも、ワヤン制作者の一人、ハルヨノ・ハルヨグリトノはバゴンのウォンド・ブロン(Blo'on)を創った。

グル・ウォンド (Guru Wanda)

 全てのワヤンの図像がウォンドを持っているわけではない。ワヤン・クリのウォンドは多くの場合、上演の各場面で同じものが使用されるのが普通である。また他に、著名なワヤンの人物の図像はワヤン・クリの人形制作者(彫り師、彩色師など)に自身の新ウォンドを創出しようという刺激を与えもするだろう。
 上演においては稀にしか登場しない人物でも、数種のウォンドを持つものがあるが、そのウォンドはワヤンの他の人物として使用されることもある。例えば、グナワン・ウィビソノの諸ウォンドはパティ・スウォンドの諸ウォンドとして使用される。即ち、ボンティット、ラウェ、ルンシット (Bontit, Rawe, Rungsit)などである。ワヤンにおいて、先のウィビソノのウォンドは、パティ・スウォンドのグル・ウォンド (guru wanda)として用いられる。
 他のワヤン人物のグル・ウォンドとして用いられるワヤンの人物の幾つかを以下に記す。(ジョクジャカルタ・スタイルのワヤン・クリ・プルウォによる)
1. ロモウィジョヨ:アビマニュのグル・ウォンドになる
2. アルジュノ・ソスロバフ:プルマディのグル・ウォンド
3. ナクロ、サデウォ:ノロヨノのグル・ウォンド
4. ルシ・セト:プラブ・ボロデウォのグル・ウォンド
5.パティ・ゴンドモノ:ボモ・ノロカスロのグル・ウォンド
6. プラブ・マツウォパティ:プラブ・サルヨのグル・ウォンド
7.エコロヨまたの名パルグナディ:パティ・スウォンドのグル・ウォンド
8.ドゥルストジュムノ:ノロヨノのグル・ウォンド
9.ジョロドロ:プラブ・ボモ・ノロカスロのグル・ウォンド
10.その他多数。

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