ラクササとはワヤン・プルウォにおいて、ブト、ヤクソ、ラスクソまたデノウォ(buta,
yaksa, raseksa, denawa)と呼ばれ、一般的に、普通の人間のワヤンよりも比較的大きい寸法で表される。 ワヤン・プルウォにおいて、ラクササには幾つかの種類がある。その内、ダナワロジョ (danawaraja)あるいはヤクスンドゥロ (yaksendra)と呼ばれるものは、ラクササたちの王国のラクササ王で、例をあげるとプラブ・ニウォトカウォチョ、ドソムコ、トルムボコ、そしてアリムボである。彼らはラコン・パクムの諸演目に元からあるラクササの人物である。その他の主要なラクササで王でない者も多くあり、その内訳は、クムボカルノ、ジャムブマンリ、プラハスト、そしてコロスルンギなどである。 ブト・プルパット (buta prepat)というものもあり、プラン・クムバンの場面に登場する。通常、ひとつの演目内でクサトリアに殺される重要な役割を担う。ブト・プルパットは四体現れる。即ち、チャキル、ブト・ラムブット・グニ、ブト・テロン、そしてプラガルボである。 ボジョバラット(bajobarat)はラクササ・ガンダルウォ(gandarwa=半神半人の一族)またジン(jin=精霊)・ラクササのことである。これらは高貴なものに属する。カヤンガン・セトラ・ゴンドマイトのバタリ・ドゥルゴのラクササの子供はボジョバラットと呼ばれる。 ワヤン・クリ・プルウォにおいてラクササ・ワヤンは幾つかのウォンド(wanda)にも分けられる。ジョクジャカルタ・スタイルではラクササ人物の諸ウォンドは以下の通りである。: Raja Raksasa (Buta Raton) ラクササ王: ウォンド・ジョコ (Wanda Jaka)はジェジェル(jejer)の場面に、ウォンド・バロン (Wanda Barong)は会議あるいは議論の場面に、そしてウォンド・ウェウェ (Wanda Wewe)は戦いの場面でそれぞれ用いられる。 Raksasa Cakil ラクササ・チャキル :ウォンド・ブランチル (Wanda Blancir)はジェジェルの場面、ウォンド・キキ(KIKIK)あるいはウォンド・ブンチュン(Benceng)は争いの場面、あるいは挑戦の場面。ウォンド・チチル(Cicir)は戦闘の場面に用いる。 Raksasa Permpuan (Denawa estri) 女性のラクササ: ウォンド・ネネス(Nenes) はジェジェルの場面、ウォンド・ブギス (Bungis)は争い、ウォンド・チチル (Cicir)は戦闘の場面に用いる。 ドゥノウォ・エストリ (Denawa estri) の人物はワヤンにおいてはひじょうに少ない。ワヤン・クリ上演ではクニョワンドゥ(Kenyawandu)とラヤルメゴ(Layarmega) だけである。 ラクササのすべてが悪心をもつわけではない。彼らの中にはブラフマナ(高僧)に属する者もいる。例えばブガワン・バガスパティやブガワン・アミントゥノである。 ワヤン・クリ・プルウォの人形制作においてはラクササ・チャキルの類い以外は、ラクササは動かす事のできる手は一つだけである。それは(人形の)前側の手、つまり左手である。いっぽう後側の手(右手と考えられる)は、その身体と一体化していて動かない。これは、ラクササとは左手(悪行)において能動的であり、右手(良識在る行為)においては静的、受け身の存在である事を象徴する。 それゆえラクササの人物はつねに悪行、不徳の行為を先行させ、良識在る行為、正義の側には進まないのである。 スラカルタ・スタイルのワヤン人形は、その多くが目がひとつである。反対にジョクジャカルタ・スタイルではその目は二つ描かれる。 |
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