2.Batara Guru Krama

ブトロ・グルの結婚

 オマラン(ウマラン)という名の商人があり、定住することなく、国々を巡り歩いていた。妻の名をデウィ・ヌルウェニといい、彼女はガンダルウォ(ジン=魔神)の王の娘であった。彼らにはウモという名の娘があった。
 母の子宮より産まれた時、彼女は普通の子供と異なり、赤い光の塊で、すばやく天へ飛び去った。光はあちらこちらに飛んだ。父はすぐさま追いかけ、それを捕らえようとしたが、果たせなかった。
 遂に光はガンダルウォ達の支配するグヌン・トゥングル山の頂に至った。そこでウマランは瞑想し、ヤン・マハ・クアサに乞うた。光の姿の彼の子が、普通の赤ん坊の姿になれますようにと。とはいえ、この時彼は、その光の姿の子が、男か女かを知らず、ウマランはただ男でも女でも構わぬ、人間の姿に変わって欲しいとだけ祈った。祈りは聞きとどけられた。その不思議な光は相違なく赤子に化身した。その赤子はふたなり(両性具有)であった。赤子を得た後、ウマランはその子をムルト国へ連れて行き、ウマイ(母の子の意)と名付けた。性別に難があることが気がかりとはいえ、ウマランと妻はその子を愛情いっぱいで育てた。
 ウマイはひじょうに美しい娘に成長した。しかしながら、彼女は未だにふたなりのままであった。年頃になってから、デウィ・ウマイ(ワヤンではしばしばデウィ・ウモとして知られる)は種々のイルム(知識)を追求することを好み、苦行を好み、ついには並ぶ者のない超能力を手に入れた。その超能力故に、デウィ・ウモは世界の支配者となることを望んだ。
 超能力を有し、美しいデウィ・ウモのことはついに天界の支配者バトロ・グルの耳に届いた。神々の指導者が、すでに聞き及んだ娘の美しさを確かめるためにやって来た。とはいえ、バトロ・グルの到来はウモによってすでに知られていた。
 バトロ・グルの超能力を試すため、その娘はトゥルバという魚(身体の長いインド洋の魚の一種)に姿を変え、海の底に飛び込んだ。はじめバトロ・グルは探している娘に会えないので困った。とはいえ、超能力を使い、デウィ・ウモが魚の姿になって海の中にいることを知った。
 バトロ・グルはすぐさまデウィ・ウモが化身した魚を海で狩りたてた。もうすこしで捕まりそうになった時、魚は再び美しい娘に変化して天に飛び去った。バトロ・グルは追いかけた。天での追いかけっこになった。とはいえ、捕まりそうになる度、デウィ・ウモはうなぎのようにつるつるした肌によって逃げることが出来た。そういうことで、バトロ・グルの、すばしこくて超能力の美女を捕まえる努力は徒労に終わった。
 くやしさと怒りで、バトロ・グルは祖父サン・ヒヤン・ウェナンにデウィ・ウモを捕らえることができるよう、もう一対の腕を与えられるように、と乞うた。祈りは聞き届けられた。バトロ・グルの肩に新たな二本の腕が生えた。それ故この神は四本の腕を持っているのである。四本の腕を得て、とうとうデウィ・ウモを捕らえることができた。
 バトロ・グルを怒らせた罪によって、デウィ・ウモはその超能力の全てを失った。バトロ・グルはかくて娘の男性器をなくし、女性器のみが残された。
 完全な女性と成してのち、バトロ・グルは彼女を妻にしたのである。
 注) ジョグジャカルタの幾人かのダランによれば、デウィ・ウモはふたなりではなく、bagapuru(即ち女性器に穴がない)の障害をもつ。バトロ・グルがkeluwih (パンの木)の葉でゆっくりと叩いて、通常の女性器に回復させた。

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